こんにちは。前回は、購買依頼から支払までの P2P(Procure-to-Pay)を、PR、PO、入庫、請求書照合、支払という一連の業務として整理しました。
今回は、その流れの中で「何を調達しているか」を判断します。直接材、間接材、消耗品、サービスは、いずれも PO を使って購入できるため混同されがちです。しかし、完成品との関係、在庫に計上するか、受領をどう確認するかによって、SAP MM 上の扱いと業務上の担当・統制が変わります。学習目安は約 40 分です。
1. 最初の重要点:4 つは完全に排他的な箱ではない
まず、直接材・間接材と、消耗品・サービスは、同じ観点で分類した言葉ではありません。
- 直接材/間接材は、「その購入物が会社の販売する製品・サービスにどう関わるか」という事業目的の分類です。
- 在庫品/消耗品は、「会社がその品目を在庫として管理するか、受領時に費用として扱うか」というSAP 上の処理・利用方法の分類です。
- サービスは、「物理的な物品ではなく、外部者が提供する作業・成果を買うか」という調達対象の分類です。
したがって、次のような重なりが起こります。
- 製品に組み込むモーターは、通常、直接材かつ在庫品です。
- 工場の保全用に購入し、すぐ使う潤滑油は、間接材かつ消耗品になり得ます。
- 社内のサイバーセキュリティ監視は、通常、間接サービスです。
- 顧客に提供する製品開発を外部委託する場合は、直接サービスと考えることもあります。
短い動画で、直接調達と間接調達の最初の感覚をつかみましょう。
Procurement for Beginners - What is Procurement & The Procurement Process
World of Procurement の「Procurement for Beginners」は、完成品の構成部品と、社員が業務を行うための PC・事務用品を対比しながら、直接調達と間接調達を簡潔に説明します。
冒頭から 直接材と間接材 の説明を視聴してください。特に、完成品に入る部品と、業務を支える PC の違いを、後の日本語用語と結び付けてください。
分類するときは、品目名だけを見て決めてはいけません。次の三つを順に確認します。
- 最終製品・顧客提供サービスに直接使われるか
- 物品か、外部サービスか
- 在庫として保有するか、すぐ特定の費用先へ計上するか
この順番を持っておくと、短い顧客シナリオでも判断しやすくなります。
2. 直接材と間接材:完成品との関係で考える
SAP の説明を使って、二つの事業分類を明確にします。
SAP の「直接材調達と間接材調達の比較」を読み、直接材と間接材を「購入するもの」ではなく、「購入する目的」の違いとして理解します。
まず冒頭の定義と、「直接材調達とは?」を読んでください。自動車メーカーにおける鉄鋼・タイヤの例で、直接材が完成品の生産に投入されることを確認します。続いて「間接材調達とは?」を最後まで読み、会社運営を支えるが完成品には投入されない支出を整理してください。列挙されている 代表例 を使い、保全、IT、事務、専門サービスが間接材調達に含まれ得ることに注目します。
直接材調達:完成品を構成するための調達
直接材調達(direct procurement) は、企業が販売する完成品、または顧客に提供するサービスを生み出すために直接必要なものを調達することです。
たとえば、空気清浄機メーカーなら次の品目は直接材です。
- モーター
- フィルター
- 外装パネル
- 電子基板
- 梱包材。完成品とともに顧客へ渡る場合
これらが不足すると、製造ラインが停止したり、完成品を出荷できなくなったりします。直接材は通常、計画的に必要量を調達し、倉庫や生産ラインで在庫として管理されます。後のモジュールで扱う MRP(資材所要量計画)は、特にこのような生産用部品の調達と深く関わります。
ただし、ここで覚えるべき核心は、「高価だから直接材」ではないという点です。安価なねじでも完成品に組み込まれるなら直接材になり得ます。反対に、高価な設計用 PC は通常、完成品の構成要素ではないため間接材です。
間接材調達:会社を動かすための調達
間接材調達(indirect procurement) は、業務の継続や効率化には必要であっても、販売する製品そのものには投入されない物品・サービスの調達です。
代表例は次のとおりです。
| 分類 | 例 | なぜ間接材か |
|---|---|---|
| 事務用品 | コピー用紙、文具、トナー | 社内業務を支えるが、完成品には入らない |
| IT 関連 | ノート PC、SaaS、通信機器 | 従業員の業務を支える |
| MRO | 保守部品、清掃用品、工具 | 設備・施設の維持運用を支える |
| 専門サービス | 監査、採用支援、研修、法務 | 会社運営を支える |
| 施設関連 | 清掃、警備、賃貸借 | 働く環境を維持する |
MRO は Maintenance, Repair, and Operations の略で、日本語では一般に 保守・修理・運用 と説明されます。たとえば、生産設備を修理するためのベルトは、完成品には組み込まれません。しかし、設備を動かし続けるために不可欠です。このため、通常は間接材に分類されます。
判定の言い方
「この品目は完成品に組み込まれるため、直接材です。」
「この購入は社内業務・設備運用を支えますが、完成品には投入されないため、間接材です。」
3. 消耗品調達:在庫に置かず、費用先へ直接計上する
消耗品調達(consumable purchasing) は、受領した物品を在庫として保有・管理するのではなく、特定の用途へ直接消費する調達です。
SAP では、この「どこで費用を負担するか」を示すために account assignment(勘定設定/アカウントアサインメント) を指定します。初学段階では、勘定設定を「この支出は、どの部署・プロジェクト・目的の費用かを指定する情報」と理解すれば十分です。
Outlining Consumable Purchasing
SAP Learning の「Outlining Consumable Purchasing」は、消耗品調達における勘定設定、在庫非管理、入庫時の費用計上という SAP 上の違いを説明します。
「Consumable Purchasing Solution Process」を読み、基本の流れ を確認してください。特に、消耗品は在庫を作らず、入庫時に原価センタなどの費用先へ計上される点が重要です。続いて「Procurement for Direct Consumption」と、その直後の必須入力条件の箇条書きを読みます。必須となる場合 を確認し、在庫管理されない品目、マスタ未登録品、外部サービスで勘定設定が必要になる理由を押さえてください。
在庫品と消耗品の違い
| 観点 | 在庫品の調達 | 消耗品調達 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 将来の使用・出庫に備えて保有する | 特定の用途で直接使う |
| 在庫数量 | SAP で管理する | 原則として在庫を作らない |
| 受領時の扱い | 在庫数量が増える | 費用先へ直接計上する |
| 勘定設定 | ケースによる | 基本的に必要 |
| 例 | 製造用モーター、倉庫保管する交換部品 | 会議用の文具、即時使用の清掃用品 |
消耗品は、必ずしも「安価な文具」だけを意味しません。たとえば、顧客案件のために購入し、その案件へ直ちに請求・費用配賦する商品も、在庫を経由せず直接消費として扱うことがあります。
反対に、コピー用紙のような品目でも、企業が中央倉庫で継続的に保管し、各部門へ払い出す運用なら、在庫品として管理することがあります。
つまり、SAP コンサルタントとしては次のように考えます。
同じ品目でも、名称だけで「消耗品」と決めない。
どこで保有し、いつ消費とみなされ、どの費用先が負担するかを確認する。
4. サービス調達:物品の到着ではなく、役務の実績を確認する
サービス調達(service procurement/役務調達) は、外部の仕入先から物ではなく作業・専門知識・利用権などを購入する調達です。
例としては、次のようなものがあります。
- 清掃・警備サービス
- システム保守
- コンサルティング
- 外部研修
- 翻訳
- 設計・開発の外部委託
- SaaS の利用
サービスでは、箱や部品のように「倉庫へ何個到着したか」を確認するだけでは不十分です。重要なのは、契約したサービスが、どの期間・数量・品質で提供されたかです。

図の左側がサービス、右側が物品の流れです。両方とも購買依頼、購買発注、請求書、支払という大枠は P2P と共通しています。一方、確認方法が異なります。
- 物品調達では、受入担当者が納品数量・状態を確認し、Goods Receipt(GR/入庫) を計上します。
- サービス調達では、提供済みの役務を記録する Service Entry Sheet(SES) を作成し、担当者が内容を確認して受入承認します。
たとえば、月額の清掃サービスなら、「清掃作業が契約どおり実施されたか」が確認対象です。コンサルティングなら、「合意した作業時間や成果物が提供されたか」を確認します。この確認が済んで初めて、請求書を適切に照合できます。
サービスは通常、物理在庫を作らず、特定の費用先へ計上します。そのため、SAP の標準的な考え方では、外部サービスを発注する場合にも勘定設定が重要になります。
ただし、サービス=必ず間接材ではありません。たとえば、自社が顧客へ提供する製品の開発作業を外部委託するケースでは、そのサービスは自社の提供価値に直接関わるため、事業分類としては直接調達に近い場合があります。
5. シナリオで判定する:まず「目的」、次に「SAP 上の扱い」
ここでは、短い業務シナリオを、複数の観点で整理します。実務では、単に「直接材です」と答えるより、理由と SAP 上の論点まで添えると、コンサルタントらしい説明になります。
| シナリオ | 事業目的の分類 | 調達対象・処理の見方 | 判断の根拠 |
|---|---|---|---|
| 空気清浄機メーカーが、製品に組み込むモーター 1,000 個を購入する | 直接材 | 物品、通常は在庫品 | モーターは販売する空気清浄機の構成要素 |
| 総務部が、社内会議ですぐ使用するコピー用紙を購入し、総務部の費用にする | 間接材 | 消耗品 | 社内業務用で、在庫に保有せず総務部へ直接費用計上 |
| 工場が、将来の故障に備えて交換用ベルトを保全倉庫に保管する | 間接材 | 物品、在庫品になり得る | ベルトは完成品には入らないが、設備保全のために保有する |
| 人事部が、新入社員向け研修を外部研修会社へ依頼する | 間接材 | サービス、通常は直接消費 | 提供されるのは研修という役務であり、社員育成を支える |
| IT 部門が、月額のクラウド監視サービスを契約する | 間接材 | サービス、通常は直接消費 | 物品ではなく継続的な IT サービスであり、会社運営を支える |
| 顧客に納品する装置のため、専用設計を外部の技術会社へ委託する | 直接サービスの可能性 | サービス | 提供された設計作業が顧客向け装置の価値形成に直接関わる |
特に三つ目の交換用ベルトは、よい注意例です。保全用部品は間接材ですが、倉庫に保管するなら在庫品として管理できます。したがって、間接材と消耗品は同義ではありません。
顧客説明で使える判定テンプレート
次の四文を、短いシナリオに合わせて使い分けられるようにしておくと便利です。
この品目は最終製品に組み込まれるため、直接材として扱います。通常は在庫品として管理します。
この購入は会社運営を支えますが、完成品には投入されないため、間接材です。
この品目は在庫として保有せず、受領時に指定した費用先へ直接計上するため、消耗品調達です。
このケースでは物品ではなく外部サービスを購入しています。提供実績を確認し、サービス受入を承認してから請求書を照合します。
用語の整理
| English | 日本語 | 読み方の目安 | 意味 |
|---|---|---|---|
| Direct procurement | 直接材調達 | ちょくせつざい ちょうたつ | 完成品・顧客提供価値に直接関わる調達 |
| Direct material | 直接材 | ちょくせつざい | 完成品に投入される材料・構成品目 |
| Indirect procurement | 間接材調達 | かんせつざい ちょうたつ | 会社運営を支える調達 |
| Indirect material | 間接材 | かんせつざい | 完成品には入らない業務支援用の物品・サービス |
| Consumable purchasing | 消耗品調達 | しょうもうひん ちょうたつ | 在庫を作らず直接消費する調達 |
| Direct consumption | 直接消費 | ちょくせつ しょうひ | 受領時に費用先へ直接計上する考え方 |
| Account assignment | 勘定設定 | かんじょうせってい | 費用・資産などの負担先を指定する情報 |
| Cost center | 原価センタ | げんかセンタ | 費用を負担・管理する部門などの単位 |
| Service procurement | サービス調達/役務調達 | やくむ ちょうたつ | 外部から作業・専門サービスを購入する調達 |
| Service Entry Sheet | サービス実績記録 | サービス じっせき きろく | 提供済みサービスの内容・数量を記録する文書 |
| Acceptance | 受入承認/検収 | うけいれ しょうにん/けんしゅう | サービス実績を確認し、受領を認めること |
まとめ
今回の重要点は、分類の軸を混ぜないことです。
- 直接材は、完成品や顧客向け提供物に直接使われます。
- 間接材は、完成品には入らないものの、会社の運営・保守・管理を支えます。
- 消耗品調達は、在庫を作らず、勘定設定を使って特定の費用先へ直接計上する調達です。
- サービス調達では、物品の入庫ではなく、提供実績の記録と受入承認が重要です。
- 同じ品目でも、完成品との関係、保管方法、費用負担先によって分類・処理が変わることがあります。
次回は、今日の分類を踏まえ、購買依頼、購買発注、入庫、仕入先請求書がそれぞれ何のために存在するのかを、より正確に区別します。
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